そして明日、早速2年間担当していなかった科目からスタートしますので、ワクワク感とともにドキドキ感もあります。
ある新聞のWEB版にこんな記事が掲載されました。
国税庁によると、黒字申告の法人の割合はバブル期の89年は約50%だったが、その後の景気低迷で年々低下し、リーマン・ショック後の10年度は約25%と過去最低を記録した。所得が赤字やゼロだったと申告(無所得申告)した法人には法人税がかからないため、国税当局は、故意に赤字に見せかける法人もあるとみて、無所得申告の法人の重点的な調査に乗り出している[毎日jp、2013年4月5日2時30分より一部転載]。
見出しは「ニセ赤字法人:1万8,264件 3年で2兆円超申告漏れ」
所得が赤字やゼロだったと申告(無所得申告)した法人をニセ赤字法人というのだそうで。
2009年7月から2011年6月までの3年間を対象に調べてみると、赤字で決算を終えたはずなのに、本当は2万社弱が黒字だったというわけです。記事によれば、申告漏れの総額は2兆4,468億円、追徴税額は1,446億円だそうです。
先に引用したように、バブル期は約50%が黒字だったのが2010年度にはその割合は約25%まで下がっています。
国税庁の『会社標本調査』(法人企業の動向)で少し正確に数字を見てみます。
まずこの調査は日本の法人(いわゆる会社)を対象にし、その実態を明らかにすることとともに、租税行政に活かすことを目的にしています。
この調査の平成23年度分では、法人数は257万490社です(連結子法人の数(8,103社)を除く)。
実は日本の会社数の正確な数はわかりません。活動実態がない、休眠中の会社があるからです。その意味で、『会社標本調査』以外にも統計調査はありますが、「税金」という視点で調査をした『会社標本調査』がもっとも網羅的であるといえます。
さて法人数が257万社。
そのうち、黒字法人は711,478社、欠損法人(いわゆる赤字法人)1,859,012社でした。
黒字法人71万社、赤字法人186万社。赤字法人の割合は72.3%です。
赤字法人がいかに多いかがわかります。
ところで、先の引用では国税庁は赤字法人のうち16万3,877社を調査したことになっています。そのうち1万8千社が「ニセ」だったというわけですから約10%が本来は黒字だったはず、ということになります。
ただ残りの90%の法人は実際に赤字だったということもいえます。不正は良くないですが、厳しい現実もここに見て取れます。
で、ここまで書いてきて、思い出したことがひとつ。
赤字とか黒字という言葉は、簿記・会計用語だと思われるかもしれませんが、簿記や会計の授業では、赤字、黒字という言葉はほとんど使いません。言葉の綾として「いわゆる赤字のことです」とはいいますが、簿記では赤字は損失、黒字は利益と表現します。
しかし一般語法として使う赤字・黒字は、やっぱり簿記・会計の世界から派生していて、決算書作成に際して、利益は黒字(黒インク)で、損失は赤字(赤インク)で書いたことに由来すると聞いたことがあります(何かで読んだのかな)。これは慣習として実務の中で発達したものですので、理論的云々という話ではありません。
現在の決算書では、損失は△で表すようになっていますが、これもなぜ△なのかはわかりません。また▲であっても問題ないと思っていますが(現にExcelなどでは△も▲もあります)、△です(→裏話)。
そしてもう少しいえば、商業高校のテキストや簿記検定のテキストでは、精算表や損益計算書では当期純利益(当期純損失)は赤ペンで書くと説明しています。いわば赤字記入です(大学の授業や日商簿記検定では赤字記入は要求していません、書いてもいいのですが)。
ここで勘がいい方は「おや、赤字は損失を表す記入だといってるのに、どうして精算表や損益計算書では利益でも赤字記入するのか」とお思いになるでしょう。
これは帳簿記入のルールの問題で利益か損失かという問題とは無関係です。
まず、帳簿では、金額を記入する欄が決まっています。そして通常はその欄に記載された金額はタテ計算して合算します。しかししばしばそこにマイナスの金額を記入する必要があります。たとえば、100円の売上があったけど、品違いで20円分返品された場合を考えます。この場合でも返品額20円は同じ欄に書きます。しかしそのまま記入すると120円の売上に見えてしまいます。これを防ぐためにマイナスすることを約束する符号として赤字記入します。
『だったら、やっぱり赤字はマイナスだから同じじゃないか。』
実はもうひとつ、隠れルールがあります(いや、隠れルールではないか)。
それは、残高が出た方に書くか、逆側に書くかに関するルールです。
先ほど紹介しましたように、精算表や損益計算書では当期純利益(当期純損失も)は赤ペンで記入します。いわゆる黒字でも赤ペンです。
話を単純化するために損益計算書だけで説明しますが(精算表に損益計算書が含まれますので)、財務諸表のうち、当期純利益を赤ペンで書くのは損益計算書だけで貸借対照表の当期純利益は黒字記入です。
なぜなら、貸借対照表では残高として純利益が計算されますので(期末資産1,000-期末負債500-期首資本400=純利益100)、計算された純利益を、金額欄のタテ計算で素直に合算できます(期末資産1,000=期末負債500+期首資本400+純利益100)。だから黒字記入のままでいいわけです。
しかし、損益計算書では収益から費用を差し引いた残額として純利益が計算され(収益900-費用800=純利益100)、これを収益の側ではなく費用の側に記入します。つまり費用800+純利益100=収益900とするのです(貸借平均の原理)。本来は残高は収益側に出るのに、それをあえて費用側に記載します。専門用語を使えば振替を行ったことを明示しようとしています。このことを財務諸表の読み手に伝えるために、あえて赤字記入するというわけです。
・・・というわけで、ウォーミングアップ終了。
明日の授業が楽しみ。
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