2013年4月12日金曜日

涼介ではなく悠介

我が家の子どもたちにはいろいろ教えてもらえる。
ずいぶん前に教えてもらったのが、Hey! Say! JUMPなるグループで、彼らが歌っている歌がなかなかよく、1曲だけ必死に覚えてカラオケで歌ったりした。

このグループに山田涼介というイケメンがいる(わが輩には子ども世代だけど)。
小生が山田涼介の名前を覚えたての頃から、生協の書籍コーナーに似たような名前を持つ作家の文庫が並び始めた。
どちらもあまり興味がないこともあって、娘とHey! Say! JUMPのメンバーの話をしていて、でまかせに名前を口走り、娘から「ちがうよ~」と指摘されることがしばしばあった。

ところで最近、思い立ち、生協に並んでいた本を手にしてみた。

山田悠介『ニホンブンレツ』(文芸社文庫、2013年2月)

300ページを超える文字数の本を一気に読ませてしまうのはさすが。
こういった、テンポだけを追求した物語、嫌いではない。

カタカナで書いてはあるが、日本分裂である。
東京都知事・金平が大阪の悪口をいう、「大阪は黙って中央に従っていればいい」と。これに大阪側が激怒し、大阪府知事となった横山が鎖国政策を実施する。このことにより、2027年2月11日、東経138度のラインで日本が東と西に分断される。そこには東西の壁まで構築される。

主人公は東条博文。広島出身でありながら東京の大学に通い、東京で小学校教師になった。彼には大学時代に同じ広島出身の彼女、西堀恵実(めぐみ)がいた。しかし恵実がたまたま帰省していたときに日本の分裂が決まり、ふたりは離ればなれになってしまう。
ストーリーは、彼女に会いたいという一心で西側に入った博文の西側での足取りを追いかける。そして無事彼女に再会した博文と彼女がどうなったのかまでを描いている(結末はネタバレになるので書かない)。

希有壮大にして荒唐無稽。(笑)
先ほども書いたが、じっくり読ませるという類いの本ではない。とにかく先を急がせる本である。なので、プロットさえ楽しめればそれでいいと割り切る必要がある。

たとえば『ジェノサイド』(高野和明)は、希有壮大にして荒唐無稽ではあっても実に緻密に物語を紡いでいる。またたとえば『ケースオフィサー』(麻生幾)もスピード感が感じられるが、齟齬や無理がないように緻密にストーリーを展開している。
それに比べれば、本書はただただスピード感だけを重視しているように思える。もし本書のプロットを『ジェノサイド』ばりに緻密に構成しようとすれば、2倍、あるいは3倍の文字数を必要とするかもしれない。

読みながら『この本は、もしかしてコミックから文字おこししたのかな』と思ったが、どうやらそうではないようだ。いっそのこと、コミックにすればいいのに。文字の足りなさを絵が補えるし。

読み終えてみて、ひとつ気になったことがある(いろいろ気になることはあるのだが目をつぶる)。
西側は階級制を導入し、トップには独裁者をいただき、しかも奴隷、平民、華族という身分がある社会として描かれている。
こうした描き方をする場合、少なくても自分の出身地側を醜く描くことで軋轢を少なくしようと考えるものではないだろうか。
調べてみれば、山田氏は東京の出身。
これはどうなのか。
著者自身がニホンブンレツの導火線という役回りなのか。(苦笑)

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