2013年5月16日木曜日

不覚

今日の3年生のゼミ。

今日は資本について報告してもらった。
こちらの意図としては会計における資本の性格を報告してもらいたかったが、報告メンバーは気合いが入っていたようで、株式会社の資本(株主資本)や純資産の部についての説明をしてくれた。

そうなると、必然的に株式についての質疑も行われる。しかも自己株式の性格を巡っての質問も出たりして、内容的にはヘビー級(もっとも簿記原理Ⅲまで履修済みであれば問題ない内容ではあるが)。

さて報告。
報告メンバーは会社設立時における発行可能株式総数(授権株)についても紹介。
その報告を聴きながら『こりゃ、会社法の規定を紹介せねばならないな』と思い、会計法規集をめくる。

『商法の時代には第160条あたりだったはず・・・』

ところが一向にその条文が見当たらない。

『うーん、困った!』

こんなときは素直に人海戦術。(笑)

「今の発表の中に出てきた設立時の発行可能株式総数が書いてある条文を法規集で探しましょう」というと、報告メンバーの一人がすかさず「第37条ですが、法規集では省略されてます。」

ガーン!

法規集を見ると確かに第37条がない。
というより、正確にいえば、第6条~第25条、第27条~第87条が省略されている。

『ちゃんと調べてるな』と内心ゼミ生をほめながらも、『そんなバカな』と思わないでもない。

ゼミ終了後、六法を取り出して会社法第37条を調べてみる。

(発行可能株式総数の定め等)
第37条  発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
2  発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる。
3  設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

たしかに第3項にある。
ちなみに旧商法では第166条第4項にあった。

第166条 株式会社ノ定款ニハ左ノ事項ヲ記載又ハ記録スルコトヲ要ス
 1 目的
 2 商号
 3 会社ガ発行スル株式ノ総数
 4及5 削除
 6 会社ノ設立ニ際シテ発行スル株式ノ総数
 7 削除
 8 本店ノ所在地
 9 会社ガ公告ヲ為ス方法
 10 発起人ノ氏名及住所
2 定款ガ書面ヲ以テ作ラレタルトキハ各発起人之ニ署名スルコトヲ要ス
3 第33条ノ2ノ規定ハ定款ニ之ヲ準用ス
4 会社ノ設立ニ際シテ発行スル株式ノ総数ハ会社ガ発行スル株式ノ総数ノ4分ノ1ヲ下ルコトヲ得ズ但シ株式ノ譲渡ニ付取締役会ノ承認ヲ要スル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ

授権株が会社法によって定款の絶対的記載事項から外れたということは何かを読んで記憶の中にあったが、それにしても『会計法規集』、ひどすぎる!(笑)
会計を学ぶ者にとって、授権株というのは知識として知っておくのは当然。
それが、絶対的記載事項から外れたからといって、その条文まで省略するのはひどすぎる。

法規集から条文が省略されていることを知らなかった小生も不覚といえば不覚(会社法施行から何年経つ?)。

研究室で過去の法規集を調べてみると、第22版(まだ商法の時代)まではたしかに第166条は記載されていたが、その後会社法に変わってからの版では第37条は最初から省略されていた。

うーん、完全な認識不足。

ゼミの時間に「これはけしからん、出版社に意見しておく」と逆ギレしてしまったが、だいぶ前からそうなっていたわけで、これまた小生の不覚以外のなにものでもない。泣きたい。

1 件のコメント:

  1. たしかに『会計法規集』さらに『会計全書』では会社法が部分掲載しかされていませんね。会計に関わる条文は削除しないでいただきたいものです。
    ちなみに,同じ出版社から『会社法法令集』が出版されています。会社法になってから条文の数が圧倒的に多くなりましたから,致し方ないのでしょうか。
    しかし,法規集が1350頁,法令集が664頁では,学生たちに携帯しなさいとは言えませんね(苦笑)。ネット利用のデータベースがないものでしょうか?(今の世の中ありそうな気がするのですが…) (M教員)

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